前日、中房温泉に入って一泊した。泊まり客は、五人。二組のカップルと自分だけである。ちょうど、正月休暇の前だったので、すいていた。泊まった部屋には、こたつと石油ストーブがあった。部屋は、ずうっと使われていないせいか、かび臭かった。
宮城ゲートから中房温泉までは、十二キロあって、そこを歩く。ほとんどゆるい上り坂である。靴を普段履き慣れていない靴であったので、両足が靴擦れになってしまった。特に右足の踵がひどく、皮がむけて痛い。靴擦れであったが、せっかくなので温泉に入る。10年ほど前にも泊まったことがあって、その時に入った温泉に入る。木の湯船であるが、新しいものになっていた。湯は、ぬるっとした感じで、とても良い。やはり来たかいがあった。
一夜明けて、朝食をとっているとき、天気は晴れと、燕山荘からの知らせがあった。今回は、天候が良くなく、寒気のせいで大荒れと聞いていたので、登れると知って良かった。
中房温泉から少し下ったところに登り口がある。川から離れるように登っていく。雪があったので、アイゼンをつける。しばらく登り続けると第一ベンチに着く。登り始めてから、すぐに靴擦れが痛くなる。天気が良いので、早く着きたかったのだが、登るたびに痛く、早く登れない。合戦小屋に着く頃には、青空は少しずつ雲に覆われてきていた。合戦小屋からは、木はなくなり、尾根筋に登っていく。登っている途中、槍が見えた。燕山荘が見えることには、黒い雲が出てきて、風も強くなった。途中、何枚か写真を撮ったが、持って行ったカメラがDMC-GF1だったので、液晶はよく見えないし、手袋をして操作するには、スイッチやシャッターを操作するのが難しく、持ってきてはいけないカメラであった。ファインダーがないとどうしようもない。と言っても、後から写真を見たら、なかなか良く写ってはいた。contax T2も持って行ったが、こちらの方がはるかに使い勝手が良かった。
結局、燕山荘に着いたので13時を過ぎていた。その頃には、風は強くなっていて、かぶっていた帽子は風で飛ばされてしまった。ほとんど景色は見えなくなってしまった。
小屋は、こたつがあって、そこに大きなテレビがつけられたままになっていた。電気を気にせず使えるのは太陽光発電なのだろうか、とにかく快適なのには驚く。泊まる場所は二階の蚕棚で、ただし電気がつく。ヘッドランプはいらない。食事が出るまで、こたつに入ってぼんやりする。夕方から風はますます強くなる。食事を終えて、こたつに入っていると、ドアをたたく人がいる。ドアを開けようとしたが、重くて開かないので、小屋の人を呼んで開けてもらう。入ってきたのは、合戦小屋でテントを張っていた人で、風と雪のために、小屋まで登ってきたのだ。とにかく驚く。嵐の中、ヘッドランプだけで、よく道を間違わなかったものである。
次の朝、7時40分に小屋を出る。風は強く、ガスっていて、何も見えない。降ったばかりの雪は、柔らかくアイゼンは効かない。時折、滑りながらも、合戦小屋に着く。踵は下りではあったが、痛く、歩くのがつらい。合戦小屋からは、樹林帯に入るので、風は強くないが、雪が降り続いていた。登ってくる人を待って、トレース以外の所を歩くと脚が抜けなった。思った以上の人が登ってきていた。11時には、中房温泉に降りた。それから、十二キロに道を歩く。足が痛いので、速く歩けない。宮城ゲートに着いたのは、14時30分を過ぎていた。